帰宅し、部屋のドアを開けると、視界の端っこを何やら嫌な気配が……。「に゛ゃ゛あ゛ッ!!」と、思わずドアを叩きつけるように閉め、外へ逃げる。黒い悪魔が……。黒い彗星が……。何故だッ? 生ゴミもあまり出さないようにしてるし、掃除も小まめにやってきたのに……。ここに住んで4年。今まで一度も顔を合わさなかったのに……。幼少の砌にケイブン社の怪奇百科か何かで「突然、物忘れの酷くなった男の頭をCTスキャンしたら黒い影が蠢いていた……。何かの拍子で体内に進入したゴキブリが男の脳を喰っていたのだッッ!!」*1という話を読んで以来、駄目になってしまった……。もう、ドラえもんのゴキブリカバーの話でのび太達がタイムマシンで古代に捨てたゴキブリが現代のゴキブリの始祖かもしれないってオチをつけられた日にゃあ「のび太、ブッ殺すッ!!」って素で殺意を覚えたくらい、駄目なのだ……。だが、いつまでも外で震えてる訳にもいかない。蚊に刺されまくってるし……。部屋を取り戻す為に、意を決して再突入。目標はまだ同じ場所にいた。逃げられるとやっかいだ。一撃で仕留めねば……。だが、武器が……殺虫剤がない。確か洗剤をかけると窒息死すると何かで聞いた事があったので、右手にバスマジックリン、左手にファブリーズの二丁拳銃で横っ飛び。ジョン・ウーアクション炸裂ッ!! ……まぁ、羽ばたくのは鳩じゃあなくてゴキブリなんですけど。が、命中したのに彼奴は泡を纏ったままベッドの下へ逃げやがった。ヤバイ。ココで見失ったら、今晩寝れない……。いやぁ、火事場のクソ力ってあるんだねぇ……。片足でベッドを蹴り上げてましたよ。露になったベッド下を駆ける彼奴に、さらに泡!泡!泡! しかし、全然死なない。ガセか? 動きは鈍くなってきているようだが、匠に物陰に忍び逃げていく。コッチも足元のモノを蹴散らして追う追う……と、トイレに逃げ込まれた。ヤバイ、もう今晩おトイレに行けないッ! が、これはチャンス。逃げ場はもうない。白兵戦用の古雑誌で叩き潰し、トイレに流す。終わった……。が、勝利の余韻に浸る間も無く、モノが散乱した上に泡まみれの部屋見て呆然と立ち尽くす。争いは空しいなァ……

*1:いや、いいかげん分別の付く歳にはなってるんで、そんなのは与太話だってのは理解してるんだけど、刷り込まれた恐怖は……